大判例

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山形地方裁判所鶴岡支部 事件番号不詳 判決

所在地

山形県東田川郡清川村字下河原八十九番ノ三

合資会社 斎藤工業所

住居

右同村字花崎五十一番地

右代表者無限責任社員

斎藤半九郞

本籍並住居

右同村字花崎百九十番地

斎藤工業所事務員

斎藤伊之助

当四十七年

右の者等に対する労働基準法違反被告事件について、当裁判所は、副検事遠藤敬正出席の上審理を為し次の通り判決する。

主文

被告人合資会社斎藤工業所を罰金八千円に、被告人斎藤伊之助を罰金参千円に処する。

被告人伊之助に於て、右罰金を完納できないときは、金二百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は、全部被告人等の連帯負担とする。

理由

被告人合資会社斎藤工業所は、土木建築請負業並に製材業を営むもので、昭和十八年頃より、東田川郡清川村字花崎を流れる立谷沢川より灌漑用水を引入れる通称北楯堰の改良工事を請負い施行して来たものであり、被告人斎藤伊之助は、以前より被告人会社に事務員として雇はれ、右北楯堰改良工事、その他の土木事業についての事務を担当して来たものであるが、同被告人は法定の除外事由がないのに拘らず、被告人会社の業務に関し、昭和二十三年三月三十一日同会社に於て、右改良工事に使用していた労働者数十名の内、別表記載の佐藤新作外十二名を三十日前の解雇予告をせず又三十日分の平均賃金をも支払はないで解雇したものである。

(証拠説明省略)

被告人等の弁護人は、昭和二十二年度の北楯堰改良工事は、基礎工事である川床堀作業が主要なもので、その作業は冬期の渇水中のみ行はれ該堰に通水開始後は作業を為し得ないのであるから、労働基準法第二十一条第三号に所謂季節的業務であり且該工事の竣工期限は、昭和二十三年三月三十一日となつていたので工事現場見張所の就労者が最も見易い所に「昭和二十二年度の工事竣工期限は昭和二十三年三月三十一日」である旨の公共事業標識を掲げて置いたから判示解雇者佐藤新作外十二名は之を知悉していたので同人等を雇傭後四ケ月以内に三十日前に予告せず、又三十日分以上の平均賃金を支払はずに解雇したのは違法でない旨主張するが、官公署の請負工事は、その竣工期日迄に完了せず、その後も続行されることは屡々見聞するところであり、殊に本件北楯堰改良工事は、証人竹越政治、大塚八郎の各証言によれば、竣工期限後も続行され、昭和二十三年七月頃漸く完了したことを認められ、又証人安藤遠助、大塚八郎、八木仁平治、原田寿の各証言によれば、右工事現場見張小屋入口附近にその工事の竣工期限等を記載した公共事業標識が掲げてあつたことは認められるが、被雇傭者に於て之を留意し、その内容を了知する義務のないことは勿論、証人佐藤新作、佐々木三郎、大森孝太郎、川俣長治郎、阿部奬、阿良梅治郎、和嶋良三、市村辰雄、高橋儀一、小贋俊一、高橋武雄、高梨広志、斎藤正の各証言を綜合すれば、判示佐藤新作外十二名が雇傭契約を締結する際その期間を定めずに雇われ、且右標識を見受けなかつたことが認められるから、弁護人の該主張は、採用しない。

次に弁護人は、被告人会社が、昭和二十二年度に請負つた判示請負工事は、堰堤残工事四十米と魚道工事(請負金額合計六十万円)水褥を含む排砂門工事(請負金額九十六万円)排砂門取付工事(請負金額五万九千円)放水路工事(請負金額十八万六千円)で右工事中竣工期限迄に完成したものは右堰堤工事、魚道工事及び水褥工事を除いた排砂門中の基礎工事のみで、その余の未完成分については、昭和二十三年三月三十一日突如山形県より請負契約を解除されたので、被告人会社は、継続する工事の大部分を失ひ、且湧水等の為その後排砂門の上部工事以外工事の続行が不可能となつたので止むを得ず判示の佐藤新作等二十七名を解雇したのであるから、三十日前の予告又は三十日分以上の平均賃金の支払をしなくとも違法でない旨主張するが、山形県より斎藤半九郞宛「請負契約変更締結並請負契約解除について」と題する書面(記録第五六丁)と証人竹越政治の証言を綜合すれば判示工事の請負契約は、昭和二十三年三月三十一日解雇当時、未だ正式に解除せられないことを認められ、尚証人佐藤新作、和嶋良三の各証言により湧水の為工事の継続が全然不可能でなかつたことを認められるから弁護人の該主張も亦採用しない。

次に弁護人は被告人会社が解雇者である佐藤新作等を大林組の事業に就職方を斡旋して、次の就職迄の間無収入となることを防止したのに拘らず、佐藤新作等はこの措置に応じなかつたものであるから被告人等は労働基準法第二十条第一項本文の責任がない旨主張するが、斡旋により雇わるるや否やは被雇傭者の自由意志に基くもので敢て之を強制することは出来ないものである。殊に証人石野建夫、佐藤新作、佐々木三郎、大森孝太郎、川俣長治郎、小贋俊一、高梨広志の証言によれば、本件に於ては当時斡旋した大林組に賃金不払の問題があつた為被雇傭者等に於て之に応じなかつたのであるから、被告人等に於てその責を免れ得ないこと当然である。

よつて、弁護人の該主張も採用しがたい。

法律を適用すると被告人等の判示所為は、各労働基準法第二十条第一項、第百十九条第一号に該当し、尚被告人会社に対し、同法第百二十一条を適用し、又被告人斎藤伊之助に対しては、その所定刑中罰金刑を選択することとし、以上の各罪は夫々刑法第四十五条の併合罪であるから同法第四十八条、第十条を適用処断し、被告人斎藤伊之助の労役場留置につき、同法第十八条、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第百八十一条を夫々適用して主文の通り判決する。

(判事 三沢清助)

(別表)

佐藤新作

斎藤正

佐々木三郎

高梨広志

大森孝太郎

川俣長治郞

阿部奬

阿良梅治郞

和嶋良三

市村辰雄

高橋儀一

小贋俊一

高橋武雄

計十三名

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